涙色パレット
とある県にある美術大学。絵画はもちろん彫刻や建築、写真なども学べて美術大学の人気ランキングで上位に輝く大学だ。

放課後の教室に女子生徒が一人。カーキのシャツに黒いサロペットのワイドパンツという格好だ。髪が邪魔にならないようターバンでまとめ、絵を描いている。

描いているのは水彩画だ。水彩紙には美しいアイリスの花束が描かれている。水彩紙とは、水彩画を描く時に適している紙で耐水性があり、用紙にシワができにくい。

女子生徒は、丸筆と平筆を使い絵を仕上げていく。丸筆は、筆が丸まっているため絵の具を含みやすく、絵の具の伸びもいいため使いやすい。平筆は、広範囲に色を塗ったり、均一に色を塗りたい時に使う。

「……できた!」

女子生徒は出来上がった絵を眺める。絵が完成したこの瞬間が、女子生徒にとってとても嬉しい瞬間だ。

「萌、まだ残っていたのか?」

声をかけられ、女子生徒は振り向く。教室に一人の男性が入ってきた。髪を明るく染め、白のニットと青のチェックシャツを重ね着し、その上から黒いジャケットを羽織った男性。
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