愛は惜しみなく与う③
志木さんって案外普通の人

話しやすかった


8階まであがり、廊下を通り、杏ちゃんの部屋のドアを開けた瞬間、グイッとものすごい力に引かれて、転がるように家の中に入った


え、なに、怖い


咄嗟のことでテンパると、目の前に杏ちゃんの顔

え?



杏ちゃんのその右手は、殴りかかろうとしている


「ちょ、ちょっと待って!」


必死で手を押さえようとしたら、杏ちゃんの、キョトンとした声がした


「あれ、志木が1番に来ると思って、殴りかかろうとしてたら…慧やん」


なんで志木さんなら殴りかかるの?
てか、人見てからしてよ!!!

杏ちゃんに押し倒される形で馬乗りされている


しかし杏ちゃんは、杏ちゃんだ



「慧、おかえり」



にっこり笑い、いつもの笑顔をくれた


後ろからゾロゾロとみんなが…


「ぎゃはは!ばーか!杏の力に負けてんじゃねーか」


朔がケタケタと…
その後ろから泉と新がひょっこり顔を出して、おかえりと言った

響は目を擦りながら、おそいよーと


あぁ


幸せだな



居場所があるって。帰れる場所があるって



「ただいま」


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