冷徹社長の初恋
水曜日の夕方、子ども達のいなくなった教室で、川原先生と机を並べて打ち合わせをしていた。
この日、両クラスとも全員新聞が仕上がって、そのでき具合を確認していた。どうしても、川原先生と私とでは、経験の差や指導力の差がこういう子どもの作品に出てしまいがだ。でも、今回は特に打ち合わせをたくさんして、見学後の授業も川原先生が合同でやってくれたこともあって、大差ない仕上がりになっていた。

「うん。2組の子もいい感じにまとめられてるね」

「はい。先生の指導のおかげです。ありがとうございます」

「いやいや。町田先生が頑張ってるからだよ。
どう?高学年は慣れた?」

「子ども達と打ち解けられたのはもちろんですけど、慣れることはないです。2年生よりも授業は難しいですし、教科も多いので追いつくので精一杯です。委員会やクラブもありますしね」

「まあ、そうだよね。まだ、いろいろなストックもないから、ゼロから用意しないといけないしね」

「そうなんです。でも、楽しいから頑張れます」

「いいね。町田先生を見てると、僕も初心を思い出すよ」

川原先生は、こうしてたまにさりげなく気をつかって声をかけてくれる。子ども達のことだけでなく、私のこともフォローしてくれる先生で、とても尊敬している。上司に恵まれたなあって思う。

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