年上少女のことが好きな年下少年の恋物語
「多すぎだろこれーー」




目の前の山ずみになった紙を見て、鈴はやる気を失った。





しおりのとじ込みはクラスの人数分やるのだが、今日隣のクラスの実行委員が不在でその分、2人が受け持つことになった。




瑠子は真面目に着々と仕事をこなしている。





「あ、あの、御門くんは部活とかやらないの?御門くん、スポーツ万能だから・・・」




鈴は小学校のマラソン大会6年連続1位。


体力テスト学年一位。


バスケやサッカーは助っ人を頼まれるくらいだ。




「うーん。やらねーかなー。時間無駄にしたくないし」




放課後や土日を部活の時間に注いでしまったら、ゆずとの時間がなくなってしまう。




「佐々木は?部活やらねーの?」



「私も・・・御門くんと同じ・・・かな・・・」





わかるぞ佐々木。青春を部活に捧げたくないよな・・・。




「あ、あの・・・さっきは・・・ありがとうね・・・!!」



「・・・・・・??」



「愛咲さんのこと・・・・・・あれ、言ってくれて嬉しかった・・・」



佐々木は元から俯いていた顔をもっと俯ける。



顔が髪に隠れて全く見えない。




貞子みたい・・・・・・




思っちゃいけないけど、なんか寒気してきた。




「いつもなら愛咲さんのわがまま聞けたんだけど、今回のは・・・・・・嫌で・・・」



「・・・・・・」



「別に小学校からだったし、気にしてなかった。耐えきれた。でも・・・」



「・・・・・・」



「折角御門くんと同じになれて、愛咲さんのわがまま、初めて嫌だった・・・!!うんって言いたくなかった・・・!!だから・・・っありがとう!!」



鈴は何も言わず、いつも通りに笑った。


その笑顔に強ばった顔が和らぐ瑠子。



真っ赤な顔がりんごみたいだ。



「またなんかあったら言えよ。俺が助けてやっから!」



「うん・・・!!・・・でも、御門くんちょっと女心傷つけるとこあるからなぁ」



「え。それ正作にも言われた」



鈴は不器用な少年である。



空気も読めない。思ったことをよく口にしてしまう彼が、普通の人でもよくわからない女心をわかるはずがないのである。



本人は女子と話す時気をつけているつもりだ。ていうかあまり喋らない。




故に女子たちには、クールな男として、


男子たちには、憎めない男として、



鈴はこの学校の人気者だ。






そんな彼と喋り、笑い合っている瑠子は言わば幸運の持ち主なのかもしれない。




瑠子は、顔を赤らめながら幸せそうに笑った。





*鈴と瑠子の仲は、瑠子にとっていい方に良くなりました。*



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