年上少女のことが好きな年下少年の恋物語
髪の毛は縛っておらず、メガネもしていない。


久々にこの姿を見た。



肩で息をしながら精一杯にゆずは話し始める。



「・・・はぁ、・・・これっ・・・お弁当・・・作ったの」



ゆずが両腕に抱えていた重箱のお弁当。


それを鈴に手渡す。



「あの・・・・ねっ・・・お友達と・・・食べるかなって・・・思って・・・・・・たくさん作っちゃった・・・へへ」



元から体力がないのに、必死に走って、渡しに来てくれた。



「朝、私に行こうと・・・思ったんだけど・・・っ・・・間に合わなくって・・・」



あぁ。ゆずは本当に優しい。


「彪さんには、ちゃんと私が作るって、言ったから・・・・・・いっぱい・・・食べて・・・ね」


そういえば、弁当のこと、忘れていた。確かに母さんは弁当作ってなかった。


その重箱の弁当は重くて、けどそれにはゆずの頑張りが詰まっている。



あぁ、ほんとに、俺・・・・・・




「・・・ありがとう。ありがとう。ゆず」



本当に嬉しくて、きっとガキみたいに笑ってるよ俺・・・。



「嬉しい。すっごく。すっごく」



「うん・・・・・・!!頑張った甲斐あったな・・・!!」



ゆずも嬉しそうに笑う。



その顔は本当に綺麗で、可愛くて、誰にも見せたくないくらい、俺だけが見ていたかった。



「ゆずも今日、オリテだろ?実行委員頑張れよ」



「うん!!すーくんも実行委員頑張ってね」




ゆずは大きく手を振る。



自分もそれに応え、少し恥ずかしいので小さめに手を振った。





「ねぇ、さっきの女の人誰なの!?」


「めっちゃ美人だったぞ!!」


「彼女!?彼女なのー!?」



バスの中、その話題で持ち切りだった。


そんな自分の話題でたくさんのバスの中に入って行くのはかなり躊躇した。



正作の隣へと座る。


前後ろと、隣の席のやつらが耳を済ませている感じがしたので、聞き取られないように正作は小声で言った。





「みんな感づいてんじゃねーの。こないだ心に決めた人とか言ってたから、お前」



「そーかもなー。まぁいいや」



その返答がおかしかったのか、正作が驚いた顔をする。



それに表情を変えぬまま、



「ゆずを好きなやつが現れても、負ける気しねぇから」



正作がクスッと笑った。


「敵は多い方が燃えるタイプか」


「あぁ。そーかもな(笑)」




その山までの移動はゆずへの気持ちが高まり、眠ることが出来なかった。



< 28 / 46 >

この作品をシェア

pagetop