一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~

ソウルメイトの励まし

「だから、ほら、話しなさいよ。何があったのか」

桜は追求の手を緩めない。

萌音は観念して、土曜日に大型家具店で佐和田に会ったこと、そして、今日起こった出来事を時系列で話して聞かせた。

海音と萌音が身体の関係を持ったことだけは内緒にして・・・。

「なによそれ?拗らせキャラもリアルでは馬鹿っぽいだけね。それにしてもホテルに連れ込まれて、そこでまんまと襲われるなんて、でかい図体して海音ったらどんだけ乙女なの?」

「えっ?襲ったんじゃなくて、襲われたん、でしょう、か?」

「萌音ちゃんは知らないでしょうけど、世の中には肉食女子は多いのよ。獲物は逃さないってスタンスは尊敬に値するかも知れないけど手段は選ばないとね」

萌音の報告と、桜の合いの手を聞きながら唖然としていたしのぶだったが、突然、奇声をあげてキレだした。

「高校生の頃、私の彼氏の悠(ゆう)くんに言い寄ってきた年上の女がいたんです。彼の塾の講師だったんですけど『大人の女の魅力は別格よ』とかなんとか言って悠くんを口説こうとして。そいつを思い出して腹立つわー!」

「それは未遂に終わったの?」

桜の問いに

「だと思います。その女の人の旦那って人が現れて修羅場になりましたけど、彼は堂々としてたから」

キィキィと奇声を上げていたしのぶだったが、悠くんを信じてるという姿にはブレはなかった。

「どうして手放しに信じられるの?」

萌音の呟きに、しのぶは不思議そうに言った。

「むしろ信じなくてどうするの?彼になら裏切られていたとしても、それが本当だと実証されなければ信じていられるくらいには彼が好きだよ」

付き合いの長さとかは関係なく、ただ彼のことが好きだから、としのぶは言った。

「そうね。疑い出したらキリがないわ。普通の友人や親子関係でもそうでしょう?信頼関係があるから一緒にいられる」

桜の言葉に頷く萌音だったが、あれだけの証拠を見せつけられては素直に海音を信用できない。

「ねえ、流川さんは海音さん本人に本当のことを確認したの?」

しのぶの言葉に萌音はただ黙って首を振る。

「ダメだよ。不安や疑問は先伸ばしにしないこと。それが円満の秘訣ね。悪質なライバルは、その隙を狙って二の索、三の索を練ってくるはず。二人が結束していなければ隙入るチャンスを与えるだけよ」

家庭を築いている桜の言葉にも説得力がある。

「わかりました。恋愛初心者なので上手く聞き出すことができるかわかりませんがやってみます」

「うん。頑張れ!」

桜としのぶのガッツポーズに、萌音はつられて笑った。
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