一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
設計課に到着すると、しのぶと萌音はまず課長の席に案内された。

人事の綺麗な女性、山崎さんは課長に二人を引き継ぐと、早々に退席の挨拶をして設計課を去って行った。

「どうも。夏田さんに流川さんだね。私は設計課課長の矢野です。よろしく」

矢野課長は40代のヌペっとした顔つきが特徴の男性。

ニコニコと笑っており、人は良さそうだがこれといって特徴がないため、萌音にとっては顔を覚えるのが難しそうな人物だと感じた。

萌音は基本、人への執着がない。

愛想がないとか、人間嫌いというわけではなく、必要に迫られなければ興味が湧かず、敢えて自分からは近づかないといった感じだ。

特に男性に対してはその傾向が著明。

思春期には、男性にも友達にも興味が湧かない自分は゛どこかおかしいのではないか゛と悩んだりもしたが、中等部2年生の時に開催された教育講演会で聞いた話が自分の中にすんなりと落ちてきて、それからは無闇に悩むことはなくなった。

印象薄い矢野課長を見て、

゛懐かしいことを思い出してしまったな゛

と、萌音は心の中で苦笑した。

とにかく、この人は今日からは直属の上司となる人だ。

萌音は意識して、矢野課長の顔や特徴を覚えることに集中した。

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