一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「隠してたなんて酷い。あの姿は擬態だったんですか?」

両手で海音の前髪を掻き分けたまま、萌音は膨れっ面で海音に言った。

顔がかなり近づいており今にも唇がくっつきそうな位置にあるのに、萌音は怒りからか気づいていない。

「だって萌音は俺に興味はなかっただろう?学生時代は建築学を学ぶことに必死だったから見かけなんて構っている暇はなかったんだ」

内心の嬉しさは顔に出さないようにしながら、微笑んで海音は言った。

「へえ、髪型と眼鏡で人ってずいぶん印象変わるもんだね」

マジマジと自分を見つめる萌音が可愛すぎる。

「萌音ちゃん・・・?」

後方から男子大学生と思われる声がした。

それに驚いて立ち上がるフリをして、海音はさりげなく、だが、味わいながら軽く萌音の唇を奪い去った。

「ちょ・・・」

「あ、当たっちゃった」

唇を押さえ、真っ赤になって立ち上がる萌音にも狼狽えず、相変わらず海音は笑っていた。

「・・・なに母校に来ていちゃついてんだよ。ざわついてるから何事かと思えば゛とんでもなくお似合いの美男美女が中庭でいちゃついてる゛って注目されてるし。見たら、鉄壁で有名な萌音ちゃんから迫ってるだろ?長嶺教授が見たら泣くよ・・・?」

そう言って肩をすくめて近づいてきたのは、大学四年生の近藤駿太(こんどうしゅんた)28歳だった。

「・・・近藤くん?」

曲がりなりにもファーストキスの相手になってしまった海音の唇を、呆然と凝視し続けていた萌音だったが、ようやく近づいてきた影に気づいてハッと海音の後方に目をやった。

「夢中かよ!」

苦笑いしているその男が、一年後輩だが6つも年上の゛近藤駿太゛だと気づいたときには、萌音は海音の腕の中に抱き込まれていた。
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