一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
午前中は昨日の残務処理。

社食で昼食を摂った後は、一般住宅リフォームの最終確認をするために、契約者様宅に向かうことになった。

昨日は社用車が空いていなかったということで電車での移動だった。

しかし、今日は利便性が低いところに足を伸ばさなければならないこともあり、優先的に社用車が使えると聞いて萌音は安心した。

会社から30km 離れた場所にあるその一軒家は、築50年以上が経過した木造住宅。

解体して新築にした方が手間はなさそうであるが、思い出深い大黒柱をどうしても残したいという施工主のたっての願いに海音も心を砕いているようだった。

古い柱を利用する価値は、正直にいうと経済的な面からはほぼない。

ツーバイフォー工法などは、均一サイズの角材と合板を接合して、柱や梁の代わりに壁、床、天井、屋根部分を既製サイズの角材に合板をあわせて組み立てていくという単純な工法であるため、高度な技術は必要とせず、コストパフォーマンスもよい。

しかも、全国で多発している災害の影響で、職人や資材が不足しており、工期を確約することも難しいのだ。

ややこしい依頼は敬遠されることも多い。

眉間にシワを寄せて話し合う海音と施工主の話を萌音も黙って聞いていた。
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