一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
その時である。

前方から来た自転車に、萌音が跳ねられそうになった。

「危ない!」

咄嗟に萌音を庇った海音が、その反動で段差につまづき転んでしまった。

「つぅ・・・!」

「海音さん、大丈夫ですか!」

自転車を運転していた男性はかなり人相が悪く、海音が転んでしまったことを無視して通り過ぎようとしている。

「ちょっと、待って・・・」

「萌音、大丈夫だから追わなくていい」

苦痛に顔をしかめる海音も気になるが、黙って逃げようとしている男性はもっと許せない。

追いかけようとする萌音に、

「頼む、追わないでくれ。萌音に何かあったら一生後悔するから」

海音の言葉に心臓が鷲掴みにされたようにギュッとなった。

「足を、捻ったんですか?」

「これくらい大丈夫だ」

無理やり笑おうとする海音の表情が痛々しい。

「見せてください」

「・・・うっ・・・!」

右の踝が靴下の上からも腫れているのがわかる。

動かすことはできるから折れてはいないようだが、このままの状態で満員電車に揺られて帰宅するのは難しそうだ。

それに17時をまわった今、移動している時間を考えると、土曜の午後の当番医も受付時間を過ぎてしまうだろう。

この辺りには大きな救命センターもない。

萌音は意を決して海音に言った。
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