一途な溺愛王子様
「昨日の話の続き、後でしようぜ」

「はて、何のことだっけ?」

「安心しろ、すぐに思い出させてやるよ」


あたしは二人の会話には関わるつもりはなく、意味もなくスマホをいじる。

カンナはきっと昨日、コウを買収していた事があたしにバレたから怒っているのだろう。そしてコウもそれを後ろめたく思っている様子。

でもあたしには関係のないこと。二人で勝手にやってくれ。


「ってかカンナお前、今朝女子に告られてたろ」


明らかにコウは話を逸らそうとしているが丸わかりな話の切り出し方だ。


「俺見たんだからな。今朝、部活終わって部室に戻る途中に、お前が女子に引き止められて告られてただろ」

「あー、そうだっけ? 覚えてない」

「まーた照れちゃって。結構可愛い女子だったじゃねーかよ。あの子って一年だろ? 初々しい感じで顔真っ赤にして告ってたじゃん」


カンナはモテる。一年の間では王子って呼ばれてるのも小耳に挟んだことあるし。王子って、本当に呼ぶ人いるんだな、なんてその時は思ったっけ。


「なんて断ったんだよ。教えろよー、王子様♡」


コウはカンナの脇を肘で小突きながら茶化す言い方でそう言うものだから、あっさりカンナの逆鱗に触れた。


「……うるせーよ、そんなに羨ましいんならお前が代わりに付き合ってやれ。この下民」


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