転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 異母兄にも異母妹にもなにかあっては後味が悪いから、ヴィオラの領地の収入から援助はするつもりだ。
 その前に、援助ができる程度に領地を回復させなければならないけれど、ヴィオラに代わって管理してくれる人物ももう選定済みだ。
 馬車の前に立つ父に向かい、ヴィオラはゆっくりと口角を上げた。

「私は、ここで生きていきます。国のためになにができるか、これから一生懸命考えます」

 残った父の子で王位継承権を持つ者はヴィオラひとり。
 だが、ヴィオラは今のところあの国に戻るつもりはない。この国で学べるだけのことを学び、あとはもう少し時間が経ってから考えればいいと思っている。

「――達者で暮らせ」
「お父様も、お元気で」
「――お前は」

 父は口を開こうとし、けれど何も思いつかないようでそのまま閉じてしまった。
 今までろくに会話もなかったから、何を言えばいいのか思いつかなくても不思議ではない。
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