たとえ君が・・・
先に注文したコーヒーが運ばれてくると渉は自分のコーヒーについてきたシロップとミルクを多香子の皿に移した。
「ありがとう。」
「いいえ。」
多香子はそういうと、自分のコーヒーに渉の分もミルクとシロップを入れて口をつけた。

昔と同じコーヒーの味に多香子の表情が少し和らぐのを渉は感じた。

すっかり表情が変わってしまった多香子。
その笑顔も、今では懐かしさすら感じてしまう。

慶輔が亡くなってから5年。
多香子は全く笑わなくなってしまった。


あの笑顔をもう一度見えることはできるだろうか・・・
そんなことを考えながら渉はコーヒーを口にした。
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