たとえ君が・・・
「自分の分は払います。」
「いいって。」
渉は食べ終えると先に会計を済ませてしまった。多香子が自分の分だとお金を渉に渡そうとすると渉はさっさと車に乗り込んでしまった。
「受け取ってください。」
「いいの。これはこの前のチョコレートのお礼。」
渉はそう言って車を走らせた。

多香子の暮らしている部屋を知っている渉はアパートの前で車を停めた。
「困ってること、無いか?」
「困ってること?」
「変な人に目をつけられてるとか。」
昔、多香子が患者にストーカーされて困っていたのを渉と慶輔が家まで送ったり、家まで訪ねてきたストーカーを捕まえたことがあった。
「今は大丈夫です。」
「そっか。それならよかった。」
「・・・今日はありがとうございました。」
「おう。じゃあ、また明日な。」
渉は手をひらひらと振り、車を走らせた。
多香子はそんな渉に小さく頭を下げた。
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