たとえ君が・・・
「院長」
多香子の声に渉もほかの看護師たちも一瞬にして視線を送った。
「今日の外来に来た患者さんの件でお話が」
多香子の言葉に渉はナースステーションから出た。
「悪い。」
「どうして謝るんですか?」
渉はナースステーションから離れると立ち止まり多香子の方を見た。
「いや。なんか。悪いなって。」
多香子は今日も渉の頭に寝ぐせがあることに気が付く。

渉はまっすぐな思いを伝える。
だからこそ信頼もされていて、周りに人もたくさんいる。
多香子の心にも渉の言葉はまっすぐに響いた。

渉には多香子が空気を変えようとして声をかけたことに気が付いていた。

「謝らないでください。」
そう言って多香子が渉の横を通り過ぎようとすると渉がその腕をつかんだ。
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