かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません

「ああ、知ってる」

「え？　な、なんで？」

きっと驚くだろうなんて思っていたから、先にそう言われて肩透かしを食らう。

「パティスリー・ハナザワから報告が上がっていた。なかなかいい数字だ。それにプロジェクト内容も問題ないと、加賀美主任にも先日連絡を入れておいた。君の発案だと聞いている」

コンサルティングの期間は内容によって数か月から数年と大きく違うけれど、プロジェクトの内容は主に実態調査・計画策定・計画実行・検証の期間に別れる。店が想像以上に協力的だったこともあり、とんとん拍子に仕事が進んでいて、もしかしたら今年中にコンサルティング契約が満了することも考えられる。そうなれば、私はもう用済みだ。

「パティスリー・ハナザワが確実に施策を実行できるようにフォローします」

「ああ、よろしく頼む。やっぱり俺の目に狂いはなかったな」

にこりと笑う長嶺さんにドキリと胸が跳ねた。そして、私はとうとう自分の気持ちに気づいてしまった。いや、もうとっくに前から気づいていたくせに、それを認めようとしなかった。羨ましいという羨望の嫉妬の感情は何度も抱いたことがあるけれど、恭子さんが長嶺さんと昔からの知り合いで、幼馴染で幼少時代の話を聞かされて、私は“やきもち”という別の嫉妬の感情を抱いてしまった。

私、長嶺さんのことが好き……好きになっちゃったんだ。

頭の中でいくら否定しても、本能の部分でそう言っている。どんなときも長嶺さんは私のことを見ていてくれて、認めてくれて、気持ちをちゃんとわかってくれた。だから彼の前で泣いたりなんかして、本当の自分をさらけ出せたのだ。