かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
暑い……。

私はタオル地のバスローブを羽織りダブルベッドの縁に腰掛けて、緊張で胸が押しつぶされそうになりながらまだシャワーを浴びている長嶺さんを待っていた。

情事の間は何もかもが頭から吹っ飛んでいたけれど、冷静さを取り戻すと彼と話し合いをしなければならない現実が襲ってくる。

何から話そうかとあれこれ頭の中で言葉を巡らせるけれど、シャワーの水音に思考を邪魔される。そして、そうこうしているうちにバスローブを羽織った長嶺さんが出てきた。

「こんな格好ですまないな」

石野さんにワインをかけられたせいで彼の衣服は今、クリーニングサービスに出されている。

「なにか飲むか?」

本当は緊張で喉がへばりつきそうだったけれど、グラスを持つ手が震えそうで「大丈夫です」と首を振った。

今の今まで裸で抱き合っていたというのに、長嶺さんは何事もなかったかのように平然としている。だから私も落ち着かなきゃ、と胸に手を当てた。

しばらくの沈黙の後、長嶺さんが私の向かいに置いてある椅子に腰かけて口を開いた。

「俺が出張している間、なにがあった? ずっと様子がおかしかっただろ? だから気になって一日帰国を早めたんだ」

「え?」

「安心しろ、ちゃんと仕事は終わらせてきた」
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