愛は、つらぬく主義につき。 ~2
なんだか。いつの間にか高津さんのペースに乗せられてこうなってた気がする。まるで。あみだクジを引かされてたみたいに。

もしあたしが千也さんを追い返してたらこうする、断らずに会えばこうする。辿り着く着地点は運に任せてたのか、賭けをしてたのか。・・・千也さんがどうなるのかも見越して、初めから交換条件を用意してたのかもしれない。そう思えば半分、腑に落ちた。

「もう話もないだろうし引き上げさせてもらうよ」

溜息とデッキ床が擦れる音に、はっとして真の胸元から顔を上げると、イスから立ち上がった高津さんと目が合った。

「気が変わったら俺のところにおいで、いつでも力になる。君と引き換えならね」

含みを持たせ口角を上げた彼。思わず口を突いて出た。

「・・・本当はどういうつもりで、あたしを呼んだんですか」

「さあ・・・なんだったかな。忘れたよ」

軽く流し、悠然と歩き出したスーツ姿が店内へと消えてく。

最後の最後まで捉えどころのない人だった。敵なのか違うのか、線引きしなかったのはあたしだったのか、高津さんだったのか。・・・“次”に会うときは訊くまでもない予感がした。

「行くよ」

舌打ちが聴こえ、真が低く言い放つ。

松葉杖をつく背中になにも言えないまま黙って追いかける。ほんとの正念場はここからだ。膝に力を入れて一歩を踏みしめた。



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