愛は、つらぬく主義につき。 ~2
言い切った刹那。開きかけた口をぐっと引き結んで(くう)を仰いだ榊。突き抜けるような眼差しを戻してあたしを見据える。

「・・・くれてやる。俺はお前のもんだ、血の一滴まで」

知らない人が聞いたら、なんて気障だって笑うかもしれない。
あたし達にしか分からない、きっとこの言葉の重みは。

「うん。・・・ありがと榊。大事に使わせてもらうね」

なんだか胸が詰まって。うまく笑えない。

「勝手に捨てるんじゃねぇぞ」

誓われてるんだか脅されてるんだか。

「肌身離さず持っとく」

「・・・おう」

榊が笑った。

ちょっと目尻が下がって口角が上がった。作った風でもなく自然に見えた。・・・初めて見た。10年越しの付き合いで初めて。

思いっきり目を丸くしてるあたしから顔を背けると、「なんだよ」ってあからさまな仏頂面。

「100年に1回しか咲かない奇跡の花を見たカンジ・・・?」

「・・・るせぇな」

「宝くじ買ったら1億当たるかも!」

「・・・・・・・・・」

すごい勢いで睨まれたからつい可笑しくなって。
不貞腐れたように歩き出した榊の袖を摘まんだまま、ついてく。

「宝くじに当たるよりあんたが長生きする方が嬉しいんだからね」

「お前より先には逝かねぇよ」

素っ気ない返事。

ねぇ榊。

心ん中で呼びかけた。

いつか縁側でお茶でもすすりながら、交わした約束を思い出して笑い合ってるくらい長生きしなきゃ。許さないからね。



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