愛は、つらぬく主義につき。 ~2
ああそっか。しっかりしろ、あたし。両手でお湯を掬い、勢いよく顔を流す。

一ツ橋の大黒柱の一本を傷付けられて、それこそお父さんもおじいちゃんも(はらわた)が煮えくりかえる思いなはずなのに。あたしの心配までさせてどうすんの。

真だって。『そんなんじゃ、オレの女は務まんないよ』って言いたいくらいだよね。自分で自分の頬を軽く叩いて気持ちを入れ直した。

相澤さんは生きてる、織江さんはなにも失ってない。マイナスじゃないんだから。今は考えちゃダメだ、次は誰がとか真じゃなくてよかったとか・・・!

「そだね。ちょっとお説教されに行ってくる。本家の娘がこれぐらいでって」

素直に笑って返すと。

「ん・・・。さすがオレの奥さん」

肩に口付けられ、躰ごと横を向いていつものワルツを踏むみたいなキスを沢山もらった。






裸の躰を寄せ合い、真の腕枕に収まって微睡みかけた意識の中でぼんやり思ったことがあった。そうあって欲しくなかったのか、理由も理屈も分からなかった。・・・でも多分。

“あの人じゃない、相澤さんを殺そうとしたのは”。






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