ボクソラ☆クロニクル

「待ってよレオン、僕が整備するのはこのありすなんだよ」
「他に何があんだよ」
「余所者の手を借りるのはイヤ! 動力部に、アリスの心臓にこんな……ッ」

 ちらりと、ルドルフさんがコチラに視線を向けた。

 こんなどこの誰かも分からない相手をアリスの心臓部に近づけたくはない。ルドルフさんが言いたいことは多分、そういうことなのだろう。

 だが、レオンさんは何故か引こうとしなかった。

「ま、良いから良いから」
「何も良くないよ」
「じゃあ船長命令ってことで」
「そんな無茶苦茶……ッ」

 結局、船長であるレオンさんに押し切られる形で私はルドルフさんについて飛行船の整備を手伝うことになった。

「良い? 僕がやれって言ったこと以外、余計なことは何1つしないでね。僕のアリスを傷付けようものなら、下の風壁の暴風域に落っことすからね」
「き、肝に銘じておきます……」

 ルドルフさんの案内で到着したのは、この船ホワイト・アリス号を動かすための心臓である動力部だった。

「すごい音……!」

 ゴウンゴウンと聞こえてくる駆動音が体を中心から震わせてくる。
 それに、なんだか他の部屋と比べても……。

「すごく暑いんですね……」
「当たり前じゃん。絶えず火をたいてる部屋なんだから」

 動力室では魔風石を燃やすことで、閉じ込められた風のエネルギーを取り出している。そのため非常に室温が高かった。
 空を飛んでいながらも船全体の温度がさほど低くならないのは、この部屋で発生した熱気がパイプを通して船内に流されているからなのだそう。

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