ボクソラ☆クロニクル


「これはこれは、ナサエル・ベルトラン侯爵じゃございませんか」

 おどけた様子でレオンさんは向こうの中心に立つ人物に声を掛けた。

「ヴォーパル・ソードのリーダーが、こんな田舎まで遠路はるばる何の御用でしょう? もしかしておたくの組織、暇なのかい?」
「なんだ、まだ生きていたのか。名前は……思い出せんな。すまない、生憎ゴミの名前を記憶しておく趣味はないんでね」
「誰がゴミだ腐れ貴族が」
「ゴミをゴミと言って何が悪い」

 レオンさんとヴォーパル・ソードのリーダー、ナサエルがバチバチと火花を散らしている。
 もしかして何か因縁があるのだろうか。

「さて、ゴミ同然の空賊諸君。大人しくこの場でお縄についておくれ」

 ナサエルの言葉に、レオンさんはハッと鼻で笑って見せた。

「空と愛しの女が俺らを待ってんだ。こんなところで捕まるわけにはいかねぇなぁ?」
「貴様はこのベルトランの名に懸けて、必ずここで捕らえる」

 レオンさんは目にもとまらぬ速さで腰の剣を抜くと、ナサエルに切りかかっていった。
 ナサエルもまた、目にもとまらぬ速さで抜刀をすると、いとも容易くレオンさんの剣を受け止める。

 2人の攻防を合図に、店内へヴォーパル・ソードの隊員たちがなだれ込んできた。店内はもう乱闘騒ぎ、あちこちから剣同士がぶつかり合う甲高い音が響き渡る。

 巻き込まれている場合ではない。
 ヴォーパル・ソードの人間に私が逃亡中のお父さんの娘だってことがバレる前に、この混乱に乗じてここを出なくちゃ。

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