神様がくれたプレゼント
2、翔Side

俺、翔(カケル)。

今は、曲を出せば必ずヒットする売れっ子のシンガーソングライターだ。

芸名はSho(ショウ)。

ここまでくるのに、ほんと苦労した。

でも、苦しい時代があったから、今の生活に本当に感謝している。

俺は、自分の気持ちを歌にする。

俺の曲を聴いて、少しでも幸せなってくれたらなって思うから。

デビューしたのが16歳の時。まだ、世間を知らないガキが、デビューすることになって、正直、浮かれてるところもあった。自分の歌は、売れると信じてた。ルックスだって、自信があった。

中学の頃からモテていたし、高校に入ってからも、何度も告白された。
でも、自分から好きになる人はいなかった。

俺の外見だけを好きなのは、わかっていた。
だからなのか、よく分からないが告白されても「どうせ外見だけだろ」って諦めていたから、そこで、一線を引いていたのかもしれない。


小さい時から歌うことが好きだった。中学になって、自分の実力を試してみたくてオーディションを受けた。

運良く受かり、正直、俺は自惚れた。

事務所に入ってからデビューに向けて、曲を作り、レコード会社に売り込みに行く。

「この程度じゃ……」「君ぐらいの子なら沢山いる」など、散々嫌なことを言われ続けた。

オーディションに受かったうちの事務所もそんなに大きくない。名が知れてないだけに、それだけで断られることもあった。でもやめようとは思わなかった。寧ろ、申し訳なかった。あんなに自惚れていた自分が恥ずかしかった。でもスタッフが家族のようで、つらいときは慰めてくれた。いいことがあったときは、心から喜んでくれた。そこが気に入っていた。

この業界は、色んな人がいる。

でも気にしてなんかいられない。

悔しくて、認めてもらいたくて、毎日練習した。

ふと、思うことは……俺は、何のために歌っているのだろう?こんなつらい思いばかり。だんだん毎日が、憂鬱になっていった。



そんな時、たまたま入ったコンビニで
流れてきたメロディー。


その歌に俺は、懐かしさを覚えた。小さい頃よく歌っていた曲。その歌を歌うと元気が出た。


あっ、これだ。俺が忘れていてこと。歌うことが楽しくて幸せになっていたあの頃。まずは、自分が楽しまないと。目の前に一筋の光が見えた時だった。


俺の曲を聴いた人が少しでも幸せになれたらいい。
俺はそのために歌いたかったんだ。





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