かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「楽しかったな」

 最初、旅行にいこうと言われた時は戸惑ったけれど、すごく楽しかった。

 将生はびっくりするサプライズをたくさん用意してくれていた。それが嬉しくて、将生の想いがすごく心に染みて泣きそうになった。

 私も将生のためになにかしたい。彼に喜んでほしい。その思いが強くなり、感情に身を任せて不確かな想いを口にするところだった。

 本当、電話が入ってよかったと思う。まだ自分の気持ちに自信を持って彼に好きと言えないくせに、雰囲気にのまれて口走るところだったのだから。

「ごちそうさまでした」

 完食して片づけを済ませ、着替えに寝室に向かう。クローゼットの隣にあるタンスの上にはアクセサリーケースがあって、それが目に留まるたびに私は将生からもらったネックレスを手に取っていた。

「何度見ても綺麗……」

 将生が電話中にいつの間にか寝てしまい、目が覚めると隣に将生が寝ていて、首にはこのネックレスが。

 起きた彼から『これが最後のサプライズ』って言われたんだよね。さり気ないプレゼントがすごく嬉しかった。

 大切にアクセサリーケースにしまい、着替えを済ませて準備を終えると、野沢君からメッセージが届く。

【おはよう。もう着いて駅の改札口の中にあるカフェで待ってる】

「嘘、もう着いたの!?」
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