かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「雑談はここまでにしましょう。社長とお話がしたいので、副社長は一刻も早くお戻りください。あと三十分で開発部との会議がはじまりますよね? 資料に目を通して会議に備えるべきではないですか?」

「いや、それはわかってるけど、将生の対処済みっていうのが気になるんだけど……」

「仕事にお戻りください」

 容赦なく言って無理やり洋太を追い出した沢渡さんに、つい笑ってしまう。

 仕事でもプライベートでも、俺には心強い味方がいて本当に助かる。

 大学までずっと小毬と同じ道に進んできた。だから初めて別々の道に進むことになる。

 俺の目の届かないところに行かせることに不安はあるが、小毬の気持ちを第一に考えたかった。

 もちろんなんの対処もすることなく、小毬を自由にさせるわけがない。不本意だが、一番信頼できる兄さんに小毬のことを頼んである。

「社長、明日の会食の件ですが……」

「あぁ」

 その後は仕事に集中し、今日も定時で退社した。小毬と過ごすこれからの日々のことを考えながら。
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