かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 洗面台の鏡に映った自分の顔は紅潮していた。瞬時にさっきのキスが鮮明に頭をよぎり、胸がぎゅうぎゅうに締めつけられていく。

「もう、なに思い出してるのよ」

 今日はこれから仕事。いつまでも顔を赤く染めている場合じゃない。

 それから身支度を整えて、将生が作ってくれた朝食をふたりで食べ。いつも電車で行くからいいと断っているのに、一緒に家を出る時は送っていくからと押し切られ、今日も会社の最寄り駅まで送ってもらった。

 ロータリーに車を停車してもらい、シートベルトを外す。

「いつもありがとう。でも本当、私なら大丈夫だからね? 電車が混んでいても三駅だけだから平気だし」

 遠回りさせてしまい、毎日申し訳ないからいいって断っているんだけどな。運転だって疲れるでしょ? これから仕事なのに……。

 その思いで言ったものの、将生は「気にするな」と言う。

「俺がしたくてしているんだから。本当は帰りも迎えにきてもいいんだぞ? なにがあるかわからないし」

「ううん、大丈夫。……ちょっと将生、過保護すぎない?」

 そんなに私って危なっかしいかな? 満員電車なら学生時代にも何度か乗ったことがあるし、滅多になにかあるわけないのに。

 すると将生はクスリと笑った。
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