二人のないしょ話
「ねえ、何の本読んでいるの?」

クラスメートの女子にそれを証明するために、小泉さんの席に行き、話しかける。

小泉さんはムッとした表情を一瞬したが、俺だとわかると少し微笑んだ顔を見せてくれた。

「……シャーロック・ホームズ」

「それってミステリーだよね。ミステリーって、難しくない?」

「そんなことないよ」

本のことを話す時、小泉さんは嬉しそうになる。いつもは無表情で、近寄りがたいとみんな言うけど、そんなことないと俺はずっと思う。

休み時間が終わり、席につく。

小泉さんは少し寂しげな顔になった。

「え〜、今日は文化祭について出し物などを決めるぞ〜」

クラス中が一気に騒がしくなる。

「何でもいいぞ。舞台発表でもいいし、出店をしてもいいぞ〜」

クラスメートが案を出している間、俺はぼんやりと小泉さんを眺めていた。
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