ずっとキミしか見えてない

不穏な噂話

「行ってきまーす……」


 覇気のない声でそう言いながら玄関のドアを開け、外へ出た私。

 久しぶりに見たあの日の夢のせいで、なんだか感傷的な気分になってしまっていた。

 家から学校までの道は、徒歩10分くらいだ。

 近くて便利という点も、志望した理由のひとつだった。

 受験勉強は大変だったけれど、頑張って本当に良かったなあと改めて思う。

 今の高校に入らなければ、光雅くんと再会するのは難しかっただろうし。

 そういえば、光雅くんの家も高校から徒歩圏内だと言っていた。

 今まで登校中に彼と出会ったことは無かったけど、偶然鉢合わせる可能性だってあるわけだ。

 そう思いついた私は、歩きながらきょろきょろと辺りを見渡す。

 だけど学校へと向かっている見慣れている制服の中に、残念ながら彼の姿は見当たらなかった。

 そううまく会えるわけないかあ。

 ふと思い出したけれど、「早く学校に行って図書室や進路室で勉強してるんだ」と、以前に光雅くんが言っていた気がする。

 そもそも私と彼とは登校時間がずれているのだろう。

 それなら会えるわけないよね――。

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