ずっとキミしか見えてない
 付き合えたとしても、離れてしまう可能性があるのなら。

 今の友達として仲のいい関係さえ、崩壊してしまうなら。

 うん、やっぱり告白なんてできるわけない。

 怖すぎて、今の私には到底無理な話だ。

 「他に好きな子!? 誰!?」「んー、内緒ー」という、楽しそうに話すふたりの傍らで、そんなことを真剣に考えたいたら、チャイムとほぼ同時に光雅くんが教室に入ってきた。

 その後ろには、先生も続いてきた。


「おはよ、紗良。自習室で勉強してたら、ギリギリになったわ」

「ーーおはよう」


 隣の席で、低く心地のいい声で私の名を彼が呼ぶ。

 ーーそれだけでいい。

 もうそれだけで、彼に名前を呼ばれるだけで、私は幸せな気がする。

 人から見れば、ほんの小さな幸福なんだろう。

 だけど私にとっては、十分すぎるほどの至福を味わえているのだった。

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