3月生まれの恋人〜Birthday present〜
翌日、三月二日
柊は、23回目の誕生日を迎えた
一日の晩、遅い夕飯を二人で食べた後
普段、定刻になると律儀に自宅に帰る柊が初めて
リビングに転がって、そのまま眠ってしまった
風邪をひいてしまうと
何度か起こすことも試みたけど
よほど疲れていたのか、ぴくりともしない柊に
あたしはベッドルームから持ってきた毛布をかけた
独り暮らしだから、何枚もあるわけじゃない毛布
お風呂から上がって、少しだけ悩んで
隣で寝ちゃおうかな……
ふかふかのじゅうたんの上に、一枚の毛布で柊と二人
あたしは柊の隣にそっと、疲れた身体を横たえた
『キレイ……』
極近に見る、薄茶色のキラキラの髪は思ったよりずっと柔らかくて
男の人なのに、女の子並みにキレイな肌
驚く程長い睫毛
眠る柊の頬にそっと手を伸ばしてみる
『おめでとうを言う前に寝ちゃった……』
時計を見るともう12時を回ってるから、今はもう三月二日
『おめでと……柊』
そっと耳元にささやくお祝いの言葉
誕生日のプレゼントは
莉奈と二人、悩みに悩んだシルバーのバングル
目が覚めたら喜んでくれるかなって、
まるでクリスマスプレゼントみたいに枕元に置いてみた
でも……
『少しだけ、残念、かな』
柊は急がなくていいって何度も言ってくれたけど、
別に急いでたつもりはなかった……んだよ?
和真の事があって、少しだけ人を好きになるのが怖かった
新しい関係に踏み出すための勇気が、あたしにはまだ足りなかったんだって……そう思う。
穏やかな横顔に目をやって、柊の髪にもう一度そっと指を這わせる
和真には感じることの出来なかった、言葉にならない暖かい感情