極上御曹司の独占欲を煽ったら、授かり婚で溺愛されています
 二十四階にある副社長室には、眩い午後の日差しが入り、エアコンをつけないと少し暑く感じるほど。

 その日差しを背中で受け止めながら、レザーの椅子に腰かけ、何度目かわからないため息を零してしまう。

 秘書の山浦さんから渡された大量の書類の山のチェックが、一向に進まない。

 ギシッと音を立てながら背もたれに体重を預け、くるりと反転して窓の外に目を向ける。

 そろそろ梅雨入り間近の六月上旬。あと数日したら梅雨入りし、雨の日々が続くと今朝の天気予報で言っていた。

 雲ひとつない青空を眺めていると、自然とまたため息が零れそうになった時、ドアをノックする音が聞こえた。

「はい」

 返事をすると「失礼します」と言いながら入ってきたのは、長年俺の秘書を務めてくれている山浦(やまうら)さんだ。

 今年で四十九歳になる彼は、頼りになる存在。山浦さんがいなければ、俺は円滑に仕事をすることができないと思う。

 そんな山浦さんはデスクの上の手つかずの書類を見て、俺以上に深いため息を漏らした。

「長期出張から戻ってこられたばかりなので、仕事に身が入らない……というわけではないですよね?」

「えぇ」
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