死神列車は、記憶ゆき


けれど小夜のお父さんの転勤が決まり、三年生に上がるのを節目に隣町に引っ越してしまったのだ。

もともと高校に入学してからは小夜と行動を共にしていたから、小夜が転校した後、私は〝一人ぼっち〟になった。簡単な挨拶を交わすクラスメイトはいても、同じ机を囲んでお弁当を食べる友人はいないし、週末に遊びに誘える子もいない。

でも、高校に進学する前の私も同じような感じだったから、特に気にしてはいなかった。友達が側にいる楽しさを知った分、少し寂しさが生まれただけで。

そんなこんなで毎日を過ごしていたある日のこと。平穏だった私のクラスでいじめが始まったのは、ゴールデンウィークがあけた頃。

標的は私ではなく、吹奏楽部に属している女子生徒だった。何をきっかけにいじめが勃発したのかは分からないけれど、気付いた時には、彼女はクラスカースト上位の女子たちに嫌がらせをされるようになっていた。

毎日毎日、心ない悪口を浴びせられ、机の中にゴミを入れられ、教科書を隠され、そういったことをされているのを見ているうちに耐えきれなくなったのは私の方で、私は彼女を助けたいと思った。


だから、彼女をいじめていた女子たちにとうとう言ってしまったのだ。

『あの、……もうそろそろ、辞めてあげたらどうかな』

私は多分、この先一生忘れないだろう。この台詞の後、私に向けられた、噛み付く悪魔のような視線を。いじめのターゲットが、私にすり替わった瞬間だった。

そして私の予想通り、翌日から私は執拗ないじめを受けるようになった。

靴を隠されたり、教科書がズタズタに破られていたり、クラスメイトの前で悪口を叩かれたりと、そのどれもは昔ながらのやり方だったけれど、私の心を蝕んでいくには十分だ。

私が勇気を出して助けたあの女の子も、掌を返したように私を無視し始める。また、いじめられるのが怖いからだろう。

気付けば私は常に地面に視線を落とし、いつまた悪口が飛んでくるのかとビクビク怯える日々。

助けてくれる人も何もない、お父さんを早くに亡くし、母子家庭で懸命に頑張って私を育ててくれているお母さんにも、悲しませたくないからという気持ちが勝って言えない。小夜に連絡をしようとしたこともあったけれど、彼女にも余計な心配をかけたくないという思いがあり、結局連絡はできなかった。

……本当に、滑稽だ。クラスの中でただ一人孤立し、空気のように生きていかなければならない。まるで地獄と化したこの教室に、私の居場所なんてとっくにない。

「……えー、これでSHRは終わりだ。新学期、気をつけてこいよ。課題も忘れずにな」

いつの間にか担任の話は終わりを迎えていたようで、その台詞を聞いた後、そそくさと立ち上がり帰りの準備を始める生徒たち。


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