それは一夜限りの恋でした
「でも一番は、あっちには由比がいないからなー」

「……はい?」

つい、まじまじと顔を見てしまう。
向坂さんはぐいっとグラスのワインを飲み干し、瓶から手酌で注いだ。

「由比がいないとものが見つけられないからな。
由比は俺以上にものの場所を把握してくれていたから」

「はぁ……」

わかっていたことなのに、残念な気持ちでいっぱいになった。
向坂さんが特別私を可愛がってくれたのは、自分が教育係だったのと、すぐにものを見つけてくれるから。

「だから向こうではちゃんと、整理整頓を心がけたらいいんですよ」

「それができたら苦労はしない……」

はぁーっと向坂さんの口から重いため息が落ちる。
イケメンエリートの彼の、唯一にして最大の欠点だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれないけど。

どうでもいい、いままでのことを話ながら食事は進んでいく。

「でも俺が言ったとおりだったろ。
由比はこの仕事、向いている」
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