ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


『婿・・・か』


いつもは、”俺はそんな器とかじゃないですから”ってサラリと(かわ)せるのに、久しぶりに酒を飲んだせいか、そんなことが未だに頭に残ってしまう


結婚とか真面目に考えたことなかった
これだけ忙しくければ、それが現実味を帯びることなんてない

それにこの忙しさに嫌気が差したりすることもないぐらい、頭の中の大半は仕事で埋め尽くされている

でもなによりも
俺が守りたいのはたったひとつ

仕事で埋め尽くされている頭の中にずっと居座り続ける彼女
・・・・ただそれだけだ



それだけなのに
なんでそれがいつまで経っても叶わないのは
・・・・彼女の消息を未だに掴めていないから



『この世の中、32才ともなると、結婚とか考えなくてはいけないのか?』


溜息をつきながら、切符を購入した時にスラックスのポケットに入れておいたおつりを取り出して、自動販売機の硬貨投入口に入れた。



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