ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋
Reina's eye ケース13:新しいイノチ

【Reina's eye ケース13:新しいイノチ】



東京の大学病院に妊娠9ヶ月で入院した私。

妊娠の影響による妊娠高血圧症候群という病気に(かか)ったらしい。
それによって、母体の安全のため、そして心臓病を有するお腹の中の赤ちゃんの安全のためにも臨月に入ったらすぐに帝王切開で出産することになった。

入院生活は自宅との環境の違いや身体を動かす機会も減っているせいか、なかなかぐっすり眠ることができない。
でも、以前の私のように睡眠導入剤に頼らずになんとか過ごすことができている。

それは
名古屋の日詠先生に病院の屋上で助けて貰ったあの日から、夜、消灯時間前にホットミルクをいれて飲むことを東京に来てからも続けていたから。


帝王切開予定日の前夜。
その夜も私は病棟の電子レンジを貸りてホットミルクをいれて飲んだ。

それを飲む度に自分のいれたミルクとは味が異なる、日詠先生がいれてくれたホットミルクが恋しくなるばかり。

『今まで、いろいろあったな・・・』

それを飲みながらこれまで本当にいろいろあった自分を想い返し、そしてこれからの自分をも考えてしまう。


『とうとう明日だ・・・・』


ここまで来るのにいろいろあったけれど
ちゃんと赤ちゃんに会えるかな?

赤ちゃんに生きる力があっても
私に出産を乗り越えて生きる力がなければ
赤ちゃんには会えない・・・・

もし、私と赤ちゃんとが一緒に ”生きる道” に進むことができたら
私は真っ先に、名古屋の日詠先生に、ありがとう・・って伝えたい。

でも、日詠先生から
赤ちゃんの心臓に異常があるコト
”自分は私の兄” というコト
それらを告げられたあの日、

日詠先生は自ら私の前から姿を消しちゃったから
簡単には再会なんかできないか・・・

私はこの先、
いつか彼に再び会って、ありがとうという言葉を伝えることができるのかな?

ホットミルクを飲み終えた私はベッドの中にもぐりこんだけれど、そんなコトを考えているうちに目が冴えてきてしまって。
そのまま目を閉じるコトなく手術予定日の朝を迎えてしまった。


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