ラヴシークレットルーム Ⅰ お医者さんとの不器用な恋


再び目を閉じた彼女をじっと見守りながら到着した病院の救急出入り口で迎えてくれたのは

「ナオフミくん?!」

産婦人科病棟の看護師長、福本さんだった。



「救急車に同乗なんて、何があったの?」

『詳しい事情は検査が終わった後で。エコー(超音波検査機)をスタンバイして下さい。』

「わかったわ。」


福本さんはすぐさま院内PHSで病棟に連絡を取り、エコーの準備を指示してくれた。

その後、担架からストレッチャーへ彼女を移乗させるのを手伝ってくれた福本さんは彼女を顔を覗き込むなり、突然声を上げた。


「ナオフミくん!!!!!! 彼女はもしかして・・・」

『多分、福本さんのお察しの通りです。その話も後で。急ぎましょう。』

「どうしてこんな・・・・」

『福本さん。』


いつも明朗活発な福本さんが不意に声を振るわせた。

おそらく福本さんも心を揺らしているのだろう
彼女は俺の事情を知っている数少ない人間だから

でも、今はそんなことに気を取られている暇はない
もし胎児を流産したら彼女は多分もっと傷付くだろうから


「彼女を全力でフォローする。あなたは診療に集中して。」

『わかりました。お願いします。』


俺と福本さんはストレッチャーを押しつつ、お互いに引き締まった声でそう確認を取り合って、超音波検査室の前で別れた。

彼女が横たわったままのストレッチャーの真横で俺は
廊下の一番奥にあるステンドガラスから差し込む朝陽に顔を(しか)め、検査室のドアに手を伸ばした。

そして一歩前へ歩みを進めた。



これが
俺と伶菜がともに歩く
新たな第一歩であることは間違いないだろう


そしてこれが
俺と伶菜の
新しい波乱含みな人生の幕開けだった。



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