いちばん星の独占権



「へーき、これくらい大丈夫」

「だめっ、だよ」





本気で平気だったのに、ほのかちゃんはむ、と頬をふくらませる。



なんだその顔、かわいいな。


ハムスターみたいで思わず頬をつまみたくなって、さすがにそれはマズいだろ、と我慢する。





「すり傷を甘く見ちゃだめなんだからねっ? 傷口から雑菌が入ったりしたら、感染症になっちゃうことだってあるんだから。ずっと前、りんくんも傷が膿んじゃって────っ、ふえ?」





さっきちゃんと我慢したのに、水の泡。

ふに、とほのかちゃんの頬をつまんでしまう。



あたりまえだけど、ほのかちゃんはきょとんとしている。




……だって、なんか、今はほのかちゃんの口から佐野の話を聞く気分にはなれなかった。





「あ、ごめん」




ぱ、と手を離す。
つか、ほっぺ、やわらか……。



なんて、不埒にそんなことを考えている間も、ほのかちゃんは理解が追いついていないようで、きょときょとしていた。




そして、急に。

ぶわっとリンゴみたく顔を真っ赤にさせたかと思えば、気合いを入れ直すかのように、ぺちっと両手で頬を叩いて。




え、今の、なに?





< 173 / 315 >

この作品をシェア

pagetop