一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》


すると予想どおり、彼が眠った私を部屋のベットの上まで運んでくれたという。

寝ぼけた私は部屋番号も教え、鍵も彼に託したらしい。








申し訳なさと羞恥心でいっぱいになり、彼には怒られる事を覚悟したが彼はとても冷静に〝仕事もプライベートも程々になさって下さい〟と言われただけだった。


それから彼の態度が少し余所余所しい。








仕事が忙しいのだとは思うが、前のように必要以上に絡むことは無くなった。


社内ですれ違っても優しく微笑むだけで、頭を下げるとそのまま通り過ぎて行ってしまう。







会社にもだいぶ慣れたのか、他の部署の人とも立ち話をしている姿をよく見かける。


そんな風になればいいなと望んでいた事なのに、いざそうなると少し寂しさを感じてしまって自分の身勝手さには呆れる。










私は彼とどうなりたいのだろう。


自問自答を繰り返すばかりで、動けずにいる。






『紗江、おはよ〜。さっきそこで片瀬くんと会ったよ。最近随分と張り切ってるみたいだね。陽介さんも言ってた。最近は特に人付き合いに力入れてるみたいだって。前は紗江だけに優しいかったけど、他の人ともコミニュケーション取るようになったから片瀬くんの株も急上昇。しかも新たにと得意先もバンバン取ってきてるらしいよ。』

「そう、、みたいだね。」

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