死者の幸福〜最期のメッセージ〜
不思議の国のアリスは聞いたことがあるが、鏡の国のアリスは聞いたことがない。藍は訊ねた。石川翠は瑠璃から聞いた話を言う。

「不思議の国のアリスの続編で、アリスが鏡を通り抜けて異世界に迷い込むお話らしいです。ハンプティ・ダンプティがどうのこうのって言ってました」

少し話をした後、互いに「ありがとうございました」と言って別れる。藍は、石川翠が前を向いて生活していることにホッとしていた。

「……アリスか……」

大輔が刑事の顔になり、呟く。藍は「どうしたの?」と訊ねた。こんな顔を見せている時、大輔は必ず事件を解決に導いてくれる。

「実は、海彦さんの家に行ったんだが、童話を集めるのが趣味だったらしい。書斎にはたくさんの童話集や児童文学が並べられていた」

「その中にアリスもあったの?」

「ああ。不思議の国も鏡の国も両方あった」

藍は胸に手を当て、考える。キーワードがいくつも浮かんだ。

癌、有毒植物、アリス、玉子さん、A……。
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