旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 父に送り出され、俺は動物園関係者のもとへ急いだ。話を聞けば、なんと一頭ホワイトガイガーの赤ちゃんがいなくなり、飼育員や理子が必死で捜しているのだという。

 そこで俺も捜索隊に志願し、とりあえず理子の姿を捜していたのだが……。その途中で、ちょうど植え込みの陰で彼女が倒れ込む瞬間を目撃した。

 慌てて救急車を呼び、どさくさに紛れて再び逃げ出そうとする小さなホワイトタイガーを捕まえ、父の視察のお供だったはずが、予想外にバタバタしてしまった。


 その後、運ばれた病院で理子が無事に意識を取り戻すと、俺が席を外していた間に父が勝手に理子と接触していた。

 その現場を見た瞬間、父が約束を破ったのではと心配になったが、どうやら自分の正体は明かさなかったらしく、後になって理子が〝あれは誰なのか〟と俺に尋ねてきた。

 今思えば本当のことを話すチャンスだったのかもしれないが、俺はその勇気がなく『ガンベロの社長』と短く告げただけ。しかし、のちに後悔した。

 自分の身分を理子に隠そうとすればするほど嘘が増え、真実がますます言い出しにくくなると気がついたからだ。

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