旦那様は内緒の御曹司~海老蟹夫妻のとろ甘蜜月ライフ~

 今日もそんな思いで、二課のオフィスに足を踏み入れる。するとまだ数人の姿が残っていて、偶然にも理子のチームの社員たちのようだった。

 肝心の彼女の姿は見えないが……。

「……あ。腐れ外道のエビ先輩」

 俺の姿を目ざとく発見した秋山が呟いた。その声に反応して、見慣れたいつもの面々も一斉に俺の方を振り向く。

 と、同時に全員から殺気立った視線を向けられ、罵詈雑言が飛んできた。

「よくここの敷居を跨げましたね。海老名さんの神経を疑います」
「理子ちゃん可哀想……海老名くんみたいな口八丁手八丁の男にもてあそばれて」
「蟹江さんに失恋してから、アンタに憧れてた俺が馬鹿でした。たとえアンタが由緒ある金持ちの家に生まれた伊勢海老でも、あんなふうにひとりの女性を傷つけて泣かせるなら、年中真剣に発情してるウサギのほうがまだましです」

 薄々わかってはいたが、彼らはどうやら俺と理子の間になにがあったのか知っているらしい。

 つまり、彼らにとっての俺は、理子を傷つけた最低男。こうして罵られても仕方がないが、それでもまだ俺は彼女をあきらめられない。

「……理子は?」

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