きみに光を。あなたに愛を。~異世界後宮譚~
第20話:御心のままに(1)
アセナは望んで皇妃になるわけではない。
処々の事情が重なって就くことになってしまった、というのが正しい。
もとより宮女になったのも自分の意思ではないのだ。
だが、自らの進退を後宮の主であるアスランでもなくヤスミンから脅されて諾と言わされるのは道理に合わない。
有り体に言えば癪に障る。
皇妃になる宣言もつまるところ、アセナ自身の意地から出たものだった。
「よく言った。アセナ」
面白い見世物を見た子供のように愉しげに笑いながら、アスランが割ってはいった。
アセナは腹立ちを隠さずアスランを睨みつける。
(この方絶対楽しんでた。なんて悪趣味なの)
広い部屋ではあるが同じ部屋に居れば、先ほどのやり取りも充分聞こえていただろう。
離れたところで止めることもなく女の諍いを眺めていたのだ。
この後宮の主はつかつかと歩み寄り口角を軽く上げるとアセナの頭を雑に撫でた。
「見事だったぞ」
「は!?」
アセナはアスランを見返す。さも愉快そうに声を上げて笑い、アスランはアセナの隣に腰掛けた。
「ヤスミン、皇妃の進退を決めることができるのは俺のみだ。お前はその立場にない」
戸惑うヤスミンの視線を真正面から受け止めきっぱりと言った。
「ですが陛下っ!! このようなことは理にかないませぬ」
ヤスミンは声を上げる。
「ヤスミン。分からぬか。俺が決めた事だ」
とアスランはゆっくりと息を吐いた。
「どこの家門の出であろうと、例え隣国の王族出身であってもこの後宮に於いては一皇妃であることは変わらぬ。ヤスミンよ。序列が第一位であるとしてもアセナや他の皇妃と同じ位地にあることを覚えておくがいい」
処々の事情が重なって就くことになってしまった、というのが正しい。
もとより宮女になったのも自分の意思ではないのだ。
だが、自らの進退を後宮の主であるアスランでもなくヤスミンから脅されて諾と言わされるのは道理に合わない。
有り体に言えば癪に障る。
皇妃になる宣言もつまるところ、アセナ自身の意地から出たものだった。
「よく言った。アセナ」
面白い見世物を見た子供のように愉しげに笑いながら、アスランが割ってはいった。
アセナは腹立ちを隠さずアスランを睨みつける。
(この方絶対楽しんでた。なんて悪趣味なの)
広い部屋ではあるが同じ部屋に居れば、先ほどのやり取りも充分聞こえていただろう。
離れたところで止めることもなく女の諍いを眺めていたのだ。
この後宮の主はつかつかと歩み寄り口角を軽く上げるとアセナの頭を雑に撫でた。
「見事だったぞ」
「は!?」
アセナはアスランを見返す。さも愉快そうに声を上げて笑い、アスランはアセナの隣に腰掛けた。
「ヤスミン、皇妃の進退を決めることができるのは俺のみだ。お前はその立場にない」
戸惑うヤスミンの視線を真正面から受け止めきっぱりと言った。
「ですが陛下っ!! このようなことは理にかないませぬ」
ヤスミンは声を上げる。
「ヤスミン。分からぬか。俺が決めた事だ」
とアスランはゆっくりと息を吐いた。
「どこの家門の出であろうと、例え隣国の王族出身であってもこの後宮に於いては一皇妃であることは変わらぬ。ヤスミンよ。序列が第一位であるとしてもアセナや他の皇妃と同じ位地にあることを覚えておくがいい」