記憶の中の溺愛彼氏
記憶
プロローグ〜

高校生の頃、好きな人がいた。
告白して、付き合って毎日が幸せで淡い初恋。
共感してくれる家族。
仲の良い友人。
大好きな彼氏がいればそれで充分だった。

***

「香奈ちゃん…俺…ずっと好きなんだ」

熱っぽい眼差しで幼なじみの宇都宮翔君が私に告白してきた。

「あ、ありがとう…」

私は返答に困りながら、何て返事をしたら翔君を傷つけないだろうかと頭の中で模索する。

目の前で立っている幼なじみは、私の家の真向かいに住んでいる二つ年下の男の子で、近所でもイケメンと評判の男の子だ。その上、年齢よりも少し落ち着いた物腰で、同学年といってもいいくらい。

「えっと…」
返事に困っていると、それを察したのか翔君は少し照れ臭そうだった。

「気持ち伝えたかっただけで、困らせる気はないから…」

翔君がそう言って、私も返事をしようと彼に向き合う。

「…あのね翔君、告白は嬉しいんだけど、私、今付き合ってる人がいて…」

私がそう言うと、フゥーっと小さな息を吐いて、幼なじみの翔君は「分かった。」と返事をした。

「忘れていいから…これからもよろしく」

このちょっとした出来事は、家族ぐるみという間柄で、毎度顔を合わす私には、気まずくてやりにくい訳で、告白された事もつい無かったことにしてしまいそうになった。

それを察したのか、この日から翔君とはたまに顔を合わすけど、私に何か言いたげで、彼の視線が気になった。
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