恋歌はクリスマスを彼と過ごしたい
 村田に合わせ、いつもより一時間遅く恋歌は会社を出る。横を歩く村田は無口だが、わずかに口許を緩めている彼の表情を見れば上機嫌だと丸わかりだ。

 うん。

 恋歌は軽くうなずく。

 誘って良かった。

 彼が喜んでくれれば私も嬉しい。

 夜の冷たい風がぴゅうっと通り過ぎるが恋歌の心は暖かかった。これは戦いだけど村田と一緒にいられるのは楽しい。

 今回は禁じ手を使ってしまったけど、いつかきっと彼の心を掴んでみせる。

 アニメじゃなくて私に夢中にさせてみせる。

「私、負けませんよ」

 ぽつりとつぶやくと村田が不思議そうな顔をした。

「え? 今、何か言った?」
「……えっと、秘密です」

 恋歌は悪戯っぽく微笑むと村田と腕を組む。彼の温もりが心地良くて、これが戦いであることを忘れてしまいそうになる。慌ててそんな自分を追い払おうと恋歌はさらに強く村田に身体を任せた。

 村田がやや迷惑そうに眉をひそめる。

「中野さん、歩くのに邪魔なんだけど」

 えへへーっと笑いながら恋歌は思った。

 はい。

 その言葉が聞きたかったんです。
 
 
**本作はこれで終了です。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 
< 19 / 19 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない

総文字数/150,594

恋愛(オフィスラブ)497ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「この感情……いやいやいやいや、これ違うから!」 商社に勤める大野まゆか(28)と彼女の上司の三浦部長(35)の物語。 部下に想いを寄せる三浦部長とそれに気づかないどころか彼を嫌っていたまゆか。二人の気持ちのすれ違いぶりをお楽しみください。 ついでにまゆかの自身の気持ちへの戸惑いもご賞味ください。 なお、このお話は「彼女は溺愛されていることを知らない」の続編となります。 未読のかたは先にそちらをお読みいただくことをおすすめします。
地味で根暗で電信柱な私だけど、二十代で結婚できますか?

総文字数/2,562

恋愛(オフィスラブ)5ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
書店員の清川ゆかり(28)と出版社の営業部員の佐藤(23)の物語。 結婚に憧れはあるもののコンプレックスのせいですっかり諦めモードな清川さんと彼女に好意を抱く年下の佐藤さんのちょい甘い恋愛話をお楽しみください。 **本作は書店(職場)を部隊にした短編ですのでカテゴリーをオフィスラブとしています。
彼女は溺愛されていることを知らない

総文字数/4,477

恋愛(オフィスラブ)16ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「次はどこに行くのかな?」 商社に勤める大野まゆか(28)と彼女の上司の三浦部長(35)の物語。 部下の女子社員に想いを寄せる三浦部長とその想いに気づかないどころか彼を嫌ってるまゆかの気持ちのすれ違い具合をお楽しみください。 **本作はノベルデイズでも公開しています。 **本作の続編として「やっぱり彼女は溺愛されていることを知らない」を不定期ながら現在連載中です。よろしければこちらもどうぞ!

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop