いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


***

「ごめんな、部長、どこで立花のこと捕まえたの?」
「え?えっと……会社出てすぐのところで呼び止められて」

車が走り出して、少しの間無言だった。何か話した方がいいのだろうか?と悩んでいた真衣香は、坪井の声に少しだけホッとした。

「あー、そっか……。ごめん、前にお前と一緒にいるとこ見られてるからなぁ、あの人に。手抜こうとしたら毎回立花なんだもんな、ごめんこれから気をつけるよ」
「……それって」

『どうゆうことなの?』と聞きたくて、けれど声にはならなかった。
返ってくる言葉に、また惑わされてしまう自信があったから。

(私の、気持ちが決まらなきゃ。何聞いても何話しても変わらないんだろうな)

気持ちが揺れていることはもちろんもう認めるしかない。いまだ嫌いになれてなどいないことも。

(でもまだ考えたくない)

坪井の言葉の端々を素直に聞いて、その意味を知りたいと思うことができない。

「どうしたの?なんかあったなら教えて」

真衣香が言葉を途中で止めたから、坪井は続きを気にしてか。遠慮がちに問いかける。

「……ううん。ごめんね、何でもない。あ、ここから一番近い駅までで大丈夫だからね、坪井くんだって疲れてるのにありがとう」
「疲れたけど、疲れてないよ今は」

優しくて、囁くような小さな声だった。
信号が赤になって坪井はゆっくりとブレーキを踏んで、真衣香の方をジッと見つめた。
その瞳が優しげに細められている、しっかりと真衣香の姿を移し込んで。

「立花に会えたからね」

まるで噛みしめるように、とてもとても大切そうに、その一言を坪井が声にする。
真衣香はそれを真正面から受け止めることができない。とっさに目を背けた。

「すごいなぁ、お前って。隣に座っててくれるだけで、元気になるね」
「そんなこと言わないで……」
< 264 / 493 >

この作品をシェア

pagetop