いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました



「は、隼人くん……?」
「あ、よかったよかった! 忘れられてるかと思ってた!」
「だ、だって、冬休み会ったばかりだし……」

「俺、一週間もあれば興味ない人間忘れちゃうからなぁ~」なんて言いながら、服装の怖さとは真逆のへにゃっとした笑顔を見せる。

 坪井の友人である澤村隼人だ。
 
 坪井と付き合い始めてすぐ、元旦を実家で過ごした真衣香。
 今年の冬休みは短かったこともありその日のうち、夜遅く帰宅しようとする真衣香を坪井は駅まで迎えに来てくれたのだ。
 車を見つけ、『ありがとう』と駆け寄る真衣香の目に映った不機嫌そうな坪井。そんな彼の背後から声がしたと思えば、後部座席に座る隼人がいて、目が合って。
 ……と。
 そんな感じで初対面をしたわけだけれど。実際のところすぐに隼人は帰ってしまったので、ゆっくりと話したことはなかった。

 そして、もちろんそれきり会うことはなく、突然の今だ。
 驚きを隠さずまじまじと隼人を見つめていると、彼はブルっと身震いした。

「つーかコート着てこなかったからさすがに寒っ! 真衣香ちゃん今日冷えるからいっぱい着込んどいてよ」
「え、ど、どこか行くの?」

 確かに玄関を開けて立ち話している今も、かなり寒い。けれど隼人と出かける予定は、もちろんないはずだ。
 目をパチパチとさせる真衣香をじっと見下ろす隼人の口角がニヤッと上がった。
 そして、ゆっくりと声を出す。

「真衣香ちゃんの彼氏のとこ、行かない?」
「……え」
「いや、まぁ、ぶっちゃけ俺は真衣香ちゃんとここ出てその辺ドライブでもしてろって言われてるんだけどさぁ。それじゃちょっとなぁ? あいつ女心をわかってませんよな」

ニヒヒと笑い「俺の方がわかってるわぁ~」と、自分の発言に隼人はひとり何度も頷き、納得している。

「ど、どうしてドライブ……」

 何とか言葉を返した真衣香の問いには答えずに更に隼人は言う。
 
「あ、ちなみにさ。涼太は、もうフラフラしねぇよ、それは大丈夫。でも心配でしょ、って思ってさ! 昔の女と彼氏が二人で会ってるなんて」
「え?」

 そこで腕時計に視線を下ろした隼人。
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