いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

 
 揺れた車のハンドルをしっかりと正し、慌てたように、用のないコンビニの駐車場に入って車を停めた。 
 ……そんな姿が可愛く見えて仕方がない。

「む、無理無理、死ぬ」
「うん。じゃあ約束ね。これからは一緒に、決めようね」

 微笑むと一転、青ざめていた顔色はみるみる色を取り戻し、耳がほんのりと赤く染まった。
 そうして、顔を見られまいと窓の方を向いたまま。
 
 
「……さっきの」

 坪井は小さな声を響かせた。

「さっき?」
「うん、俺はお前のもの、って。嬉しすぎてどうしようかと思った、ビビった」
「え?」
「……お前も俺の?」

 聞きながら、やっと真衣香の方を見た。
 その、ねだるような瞳。
 ああ、やっぱり。
 愛おしくて、可愛くて、息をするのも忘れてしまいそうなほどにかっこいい。

「そうだよ、坪井くんの、だよ」

 恋に、愛に。正解も間違いも存在しないのはきっと、ひとつずつ作り上げていくからだ。どこにもいないたったひとりと、ひとりが出会って。

 どちらからともなく触れあった唇。
 沈んでいく夕陽が、最後に明るく二人を映して、ゆっくりと沈んでいった。



 ***

 帰りは特に何も聞かれなかったけれど、そのまま二人で坪井のマンションへと帰った。
 ちょうど同じタイミングで隼人から連絡が入って。
 芹那が無事、恋人と合流したと聞かされた。ホッと胸をなで下ろした靴を脱いだばかりの真衣香のことを、背後からきつく抱き締めた坪井。
 その暖かな気配に問いかける。

「芹那ちゃんはどうなるのかな、仲直りできるのかな」
「……さぁ、どうだろ。青木次第なんじゃない」

 素っ気ない答えが返ってきて、不思議に思った。
「気にならないの?」と振り返って聞くつもりが声にはならない。

「……んっ、ちょ、っと坪井く」

 性急なキスに真衣香が驚き、身体を離そうとするがビクともしない。
 ちゅ、ちゅっと啄むような触れ合いの後、深く、食むように真衣香の唇を覆った。

「お前に、何もなくてよかった……」

 キスの合間に吐息混じりの声が耳元で囁く。そのまま熱い唇は益々熱を帯びながら真衣香の首筋をなぞった。

「あ……っ、ちょっとここ玄関」
「まだ怒ってる?」
「怒って、な……いけど」
「けど?」
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