【女の事件】いらくさの家

第26話

７月31日のことであった。

多香子の父親は工場へ来ていたが、ロッカーの整理をした後、主任の男性のロッカーをこじ開けて、さいふを取り出した。

そして、さいふの中から大量の現金を抜き取った。

しかし、それだけでは怒りはおさまらなかったので、さらに過激な行動に出た。

多香子の父親は、職場で気に入らない人間のロッカーを次々とこじ開けて、さいふを取り出した後さいふの中から大量に現金を抜き取った。

多香子の父親は、ロッカーの中身が詰まっている大きめの紙袋を持って、工場から立ち去った。

多香子の父親は、職場の待遇に不満があることに加えて、16年前に手術したタンノウガンの手術をした後の経過がかんばしくなかったので、仕事をやめることにした。

多香子の父親は、大きめの紙袋を持って、さみしい表情で歩きながら、何を思っていたのか…

その頃であったが、多香子は昼間から酒をあおって酔っぱらっていたので、心が大きく壊れていた。

ところ変わって、家の居間にて…

白のブラウスとピンク系のシフォンスカート姿の多香子は、どぎついアルコール濃度の酒をストレートでのんで酔っぱらっていたので、母親がものすごく心配した表情で多香子に言うた。

「多香子!!あんたね!!昼間からきつい酒をのんで酔っぱらっている場合じゃないのよ…50が近い女が昼間からなさけないわよ!!」
「やかましいわね!!アタシはもう壊れてしまった女なのよ…アタシの人生はもうどーでもいいのよ!!」
「多香子…そんなにストレートでどぎついお酒をのんでいたら体が壊れてしまうわよ!!」
「いいじゃんもう…アタシはね…何やってもダメな女なのよ…」
「何を言っているのですか!!まだ生きている間はやり直しがきくから…」
「生きている間はやり直しがきくからって…ジョーダンじゃないわよ…50が近いのにどーやってやり直せと言いたいのかしらねぇ…」
「多香子…あんたはそうやってひねくれているままでいいのかしら…多香子…」
「アタシは、生まれた時からひねくれている女なのよ!!ジョーダンじゃないわよ…どーやってやり直せと言うのだか…」

多香子はボトルを手に取って、どぎついお酒をガラスコップにつぎながらこう言うた。

「アタシの良縁が逃げた原因がゼンゼン分かっていないみたいね…アタシが20代の時におとーさんが『結婚は30過ぎてからでも遅くはない…20代のうちは独身の方が気楽でいい…結婚相手はじっとしていてもお世話をしてくださる人がいるからというからその通りにしたのに…ゼーーーーーンゼン違うじゃないのよ!!何なのかしらね!!待っていたのに、アタシの番はゼーーーーーンゼン回って来なかったじゃないのよ!!」
「多香子…その時に多香子のお見合いのお世話をしてくださる人がいたのよ…」
「それだったらどーしてお願いしなかったのかしら!!」
「お願いしたわよ…だけどその時は…」
「だけどその時は何なのかしらね!!」
「だから…その時はお願いをしていた人は他にも…」
「他にもお世話をしていた縁談があったと言わないでよね!!ふざけているわよったく…」

多香子はこう言った後、のみかけのお酒をごくごくと一気にのみほしていた。

多香子はさらに、母親に対してこう言うた。

「何なのかしらね!!なんとか言いなさいよ!!」
「多香子…おかーさんが多香子のお見合いをお願いしたご夫婦は…きちんとヤクソク守りますと…」
「ヤクソク…口だけのヤクソクでしょそれは!!」
「多香子!!それだったらどーして順番を…」
「やかましいわね!!アタシは(お見合いをお世話しているご夫婦)にだまされたのよ!!」
「多香子!!」
「やかましいわね!!その結果、アタシ。39歳になった時にオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタオタ…オタオタ騒いでどーしょうどーしょうどーしょうと言いまくって、その場しのぎで解決しようとしたのだから、アタシは失敗してしまったのよ!!ああ!!アホみたいだわもう…トイレ!!」

多香子は母親にこう言った後、ドスドスと足音を立ててトイレへ行った。

個室のトイレにて…

多香子は、洋式便器に座った後に、シフォンスカートの中から白のショーツを下ろした後、大きくため息をついていた。

何なのよもう…

アタシ…

この先…

どうやって人生をやり直せと言うのかしら…

ムリ…

ムリよそんなの…

多香子は、キーっとなって両手で髪の毛をぐしゃぐしゃとかきむしった後、頭を抱えてくすんくすんと泣いていた。