【女の事件】いらくさの家
第5話
それから時は流れて…5月6日のことであった。

この日は、章介が通っている小学校で区民運動会が開催されていたので、全校児童と住民のみなさまが運動会に参加をしていた。

しかし、ヨウスケは4月14日から家に閉じこもりの状態になっていたので区民運動会には参加することができなかった。

おにいちゃんと同じ学校へ行きたい…

おにいちゃんと同じ学校へ行きたい…

ヨウスケは、部屋の中に閉じこもり状態になっていても、学校へ行きたいと思い続けていた。

しかし、気持ちが学校へ向いていなかったので、知らないうちに学校から足が遠のいていた。

そのまた一方で、美香子は両親から『再就職をするか結婚して専業主婦になるのかどちらかにしなさい!!』と強要されていたので、気持ちがさらにヒヘイしていた。

この日も、横浜市中心部にあるハローワークへ行って、仕事を探していたが、美香子の身丈に合う条件のお仕事がみつけることができずに困り果てていた。

『早く採用をもらいなさいよ!!』『時間がないのよ!!』『焦りなさい!!』『どこの会社でもいいから面接の申し込みをしなさい!!』『美香子の身丈に合うお仕事なんてありません!!』『採用をもらってきなさい!!』『おかーさんとおとーさんは老後を楽しみたいから焦りなさいと言っているのよ!!』『おとーさんはいつ会社をやめるのか分からないのよ!!』『おかーさんとおとーさんの老後を台無しにする気なのかしら!!』…

美香子は、母親からクドクドクドクドと言われた言葉がわだかまっていたので『アタシは一生懸命になって正社員のお仕事を探しているのに…アタシにどうしてほしいのよ!!』と思ってきちがいになっていた。

ところ変わって、JR関内駅の近くにあるミスドにて…

美香子は、店内で中学の時の友人の女性と会って、タンタン麺のドーナツセットでお昼ごはんをとっていた。

食事のあと、美香子と友人の女性はこんな話をしていた。

「どないしたん?ものすごくげんなりとした表情になっているわよ…」
「アタシ…失敗してしまったみたい…」
「失敗したって…」
「シューカツに失敗してしまったのよ…」

美香子は、大きくため息をついてから友人の女性にこう言うた。

「アタシ…ハローワークへ行って、面接の申し込みをして…面接を受けに行って…採用をもらうために礼儀正しく受け答えしたのに…もういや…こんなことになるのであれば…シューカツしたくない…何なのよ一体って…怒りたくもなるわよ…」

友人の女性は、美香子がミスドに来たときにどれを食べようか迷っていた時に偶然店にいる友人のもとへやってきて、ずうずうしく『おんなじの』と店員さんに注文をしていたことに腹を立てていたので、ムッとした表情で美香子に怒鳴りつけた。

「美香子!!それはあんたの気持ちがタルいから面接官から不採用だと言われたのでしょ!!」
「えっ?」
「えっじゃないでしょ!!美香子!!あんた面接の時に面接官のゲキリンにふれるような言葉を言うたのじゃないのかしら!!」
「アタシは一生懸命になって面接官からの問いに受け答えしたわよ!!正直に答えたわよ!!」
「…のようには見えていないわよ!!」
「ねえ(友人の女性)…どうして怒っているのよぉ…アタシがあんたに何をしたと言うのよ…」
「やかましいわね!!美香子!!あんた店に入ってきた時にずうずうしくアタシが座っている席へ来て店員さんに『同じもの』と言って注文したことを怒っているのよ!!」
「どうしてそんなに怒っているのよぉ…アタシはあんたが食べているタンタン麺のドーナツセットが食べたい…」
「やかましいわね!!美香子!!アタシは思い切りキレているのよ!!ここの飲食代!!あんたが全部払いなさいよ!!」

友人の女性は美香子に怒鳴りつけた後、美香子の顔を平手打ちで力を込めて叩いてケガを負わせた。

その後、友人の女性は全身をワナワナと震わせながら美香子に言うた。

「あんたね!!アタシはあんたのユウジュウフダンな性格にイライラしているのよ!!いつぞやのことかおぼえてへんけど…アタシが中学の時にスイーツカフェに来たときに、アタシが座っている席へずうずうしくやってきて、店員さんに『同じもの』と言ってアタシが食べているチョコレートパフェを注文していたことを今でも怒っているのよ!!美香子!!」
「アタシはどれを食べていいのかわからなかったから…」
「あんたの見苦しいいいわけなんか聞きたくもないわよ!!あんたが生まれた家は…男の子ばかりの家だったわね!!親類に女の子がいなかったので、待望の女の子が生まれて来たとき…親類の人たちから『蝶よ華よと…』と言って愛でられて育ったのでしょ!!七五三のお祝いの時もゴーセイな着物をプレゼントされた…高校・大学の学費も親類の家が出してくれたのでしょ!!だから美香子は図々しい女になったのよ!!そういうところに全然気がついていないみたいね!!」
「そんな…」
「そういうことだから!!ここの飲食代はあんたが全部払いなさいよ!!分かっているのだったら返事しなさいよ!!返事も出来ないのかしら!!だから美香子はユウジュウフダン女なのよ!!」

友人の女性は、美香子に思い切りキレてしまった後に伝票を叩きつけてあかんべーをして店から出て行った。

どうしてなの…

どうしてアタシがユウジュウフダン女と言われないといけないの…

男の子ばかりの家に生まれて来たことがそんなに悪いことなの…

美香子は、友人から強烈な声で怒鳴られて平手打ちで顔を叩かれて大ケガを負ったのと同時に、心に深い傷を負った。

美香子は、どうすることもできずに泣きじゃくっていた。

その日の夜のことであった。

家の居間の食卓には、多香子の母親と美香子と父親の職場の部下の女性の娘さんがいて晩ごはんを食べていた。

テーブルの上には、白ごはん・みそしる・アジの開き・きんぴらごぼう・ひじき・野菜の煮物・たくあんが置かれていた。

父親は、一人暮らしの男性従業員さんたちに晩ごはんを食べさせてあげたいので、晩ごはんの世話をするために中華街へ行っていた。

多香子は、高校時代の数人の友人たちに誘われて渋谷まで遊びに行ってたので、章介とヨウスケを置き去りにしたのと同時に家庭のことまでもをホウキしていた。

ヨウスケは『ごはん食べない…』と言うて部屋の中に閉じこもりがちになっていたので、食卓にはいなかった。

章介も、学校から帰る時間が遅くなっていたので、家族との距離が大きくひらいていた。

部下の女性の娘さんは、多香子の母親に『おかわり』と言うてお茶碗を差し出した。

多香子の母親は、お茶碗にごはんをついであげた。

美香子は、日中ミスドで友人の女性から言われたどぎつい言葉に激しい怒りを覚えていたので、母親に対して『アタシ!!食べないから!!』と言うて、お箸を投げ捨てた。

多香子の母親は、心配そうな声で美香子に言うた。

「美香子…どうしたのよ一体…」
「やかましいわね!!ごはん食べたくないから食べたくないと言ったのよ!!」
「美香子…」
「おかーさん!!アタシがどんな想いをしてハローワークへ行っているのか分かっているのかしら!!」
「わかっているわよぉ…」
「キー!!何なのよ一体もう!!焦れ焦れ焦れ焦れ焦れ焦れ…老後を楽しみたいから老後を楽しみたいから老後を楽しみたいから老後を楽しみたいから…って…自分たちの老後の楽しみをうばわれるのがイヤだからアタシに焦れと言っているのかしら!!」
「そんなことは言っていないわよ…」
「いいえ!!言ったわ!!働いていないのにごはん食べないでとも言ったわよ!!だからごはん食べたくないから!!もういいわよ!!」

美香子は『キー!!』となったあと、せっかく作ってくださった料理をゴミ箱に棄てて、『ワー!!』と叫びながら部屋の中へ入って行った。

たまりかねた多香子の母親は、ものすごく心配になっていた。

それからしばらくして、章介が家に帰って来た。

この時章介は、黒色のプレステポータブルを持っていて、ゲームをしながら家に入ってきた。

多香子の母親は、章介はプレステポータブルを持っていないのにどうしてプレステポータブルを持っているのかと不審に思っていたので聞いてみた。

「章介…ねえ…その機械どうしたのかな…」
「知らない…」
「知らないって…」

この時、多香子の母親は章介がよその家のお子さまが遊んでいたプレステポータブルを勝手に持ってきたのではと思い込んでいたので、心配になっていた。

「章介…もしかしたら…よその家のお子さまの持ち物じゃないのかな…」
「違う!!ぼくのだ!!」

(ピロピロピロピロピロ…ピロピロピロピロピロ…ピロピロピロピロピロ…)

この時、電話台に置かれている白色のハウディ(プッシュホン)の呼び出し音が鳴り響いていたので、多香子の母親が電話に出てみた。

「はい小松崎でございます…まあ、章介の担任の先生でございますか…章介がいつもお世話になっています…(一瞬顔が真っ青になってしまう…)…ええ!!もしもし…それは本当のことでございますか!?章介が…クラスの男の子のプレステポータブルを…勝手に取っていったって…もしもし!!もしもし先生!!もしもし!!」

章介は、学校の先生から電話がかかってきたことを聞いたとたんにダーッと自分の部屋へ走り去って行った。

「章介!!待ちなさい!!章介!!」

多香子の母親は、章介を追いかけて部屋まで行った。

しかし、章介は部屋へ入った後にとじ込もってしまったので、多香子の母親が必死になって章介に呼びかけていた。

その間、居間の電話機は受話器が上がったままになっていたので、受話器のスピーカーから担任の先生の怒鳴り声がひっきりなしに聞こえていた。

「章介!!章介開けなさい!!章介!!」

ドアの向こう側で多香子の母親が必死になって呼びかけていたのにかかわらずに、章介は部屋中を暴れ回っていた。

「ワーーーーーーーーッ!!ワーーーーーーーーッ!!ワーーーーーーーーッ!!ワーーーーーーーーッ!!ワーーーーーーーーッ!!」

章介はこの時、多香子から受けた暴力が原因で頭が狂っていたので、部屋の中で強烈な奇声をあげていた。

どうしよう…

章介が学校のお友達の品物を勝手に持ち出してしまったので…

学校や親御さんたちの間から強烈なクレームが来てしまった…

どうしよう…

どうすればいいのよ…

助けて…

助けて…

このままでは…

家庭が壊れてしまう…

家の中で大暴動が起こっていた時であった。

多香子は、高校時代の友人たちと一緒に渋谷まで遠出をして、夜遊びに夢中になっていた。

渋谷PARCOでショッピングを楽しんで、マルイシティの中にあるマクドでビッグマックのセットを食べて、その後道玄坂にあります高級ホストクラブへ行って、イケメンの男をあさっていた。

そして多香子は、深夜11時過ぎにお目当てのホストの男と一緒に円山町にあるラブホへ行って、夜明けのコーヒーをのんで、男が運転するヴォルクスウァーゲンに乗って、東ヶ丘の家に帰って来た。

時は、深夜5時40分頃のことでありました。

多香子は、黄色のTシャツの下の長い丈の部分をくくってへそ出しにして、下は黒のボブソンのジーンズを着て、サックスバーの黒色の革バッグを持って、ピンク色のサンダルをはいて、爪にはド派手な色のネイルをつけて…50近い女には見えない格好をしていた。

多香子が眠い表情で家の居間へ入ってきたので、一晩中待たされていた母親とひどい大ゲンカを起こした。

「ただいま~」
「多香子!!こんな時間までどこで何をしていたのかしら!!」
「どこまでって…アタシがどこへ行こうといいじゃないのよ!!干渉してこないでよ!!」
「多香子!!」
「やかましいわね!!アタシは頭がズキンズキン痛いのよ!!寝かせてよもう!!」
「多香子!!あんたはおかあさん失格になったのよ!!ゆうべ!!章介の担任の先生から電話がかかってきたのよ!!」
「だから!!タンニンのセンコウがうちに何と言うてねじ込んできたのかしらね!!アタシ!!思い切りキレとんのよ!!」
「多香子!!多香子は章介が学校のお友達の品物を勝手に持ち出してトラブルを起こしたと言うのに…多香子は自分さえよければいいと思っているのね!!だから多香子はおかあさん失格なのよ!!」
「上等だわ!!アタシはおかーさん失格なのよ!!章介とヨウスケのことを憎たらしいと想っているわよ!!とくにヨウスケについては章介の1億倍憎たらしいと想っているわよ!!別居中のダンナの弟のソウスケが職場の女性にセクハラをしたことが原因で生まれて来たセクハラの子だから…1億倍憎たらしいと想っているわ!!」
「多香子!!なんてことを言うのかしら!!」
「アタシ!!昨日でおかーさんをやめたから…サイアクだわ!!別居中のダンナの家はセクハラ魔が住んでいる家だった…アタシの本当のおとーさんがマザコンだと言うことについてもサイアクだと想っているわ!!」
「なんてことを言うのよ!!サイアクだわ!!どうしてアタシは多香子を産んだりしたのかしら…こんなことになるのであれば…多香子を産むのじゃなかったわ!!」
「上等だわ!!アタシこそ、マザコン男の娘に生まれて来るのじゃなかったと想っているわよ!!」

多香子と母親は、激しい口調で怒鳴りあいの大ゲンカを起こしていたので、家庭内の人間関係は大きく壊れてしまった。

どうして…

どうしてうちの家族は…

仲良く暮らして行くことができないのかしら…

どうして…

どうしてなの…
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