桜の咲く頃……… 君を想う
「桜。
今日は俺が作るから、二人でゆっくり食べよう。」

いずれ母親になった桜を想像して

自分である程度出来た方が良いと思ったけど。

それはまだ、随分先の話しだし…………

それまでに、馴れれば良い事だもんな。

キッチンに進み、俺が作る気満々でエプロンを着けていたら。

キョトンとした表情で、こちらを見て

「一緒に作るんじゃないんですか??」と聞いてきた。

「そのつもりだったけど、今日じゃなくても良いかと思って。
時間もあるし、ゆっくり慣れて行こう。」

安心させたくて言った言葉に………

再び潤んでいく瞳。

…………………………………??

「やっぱり…………きゅうりも切れない私だと……
足手まといですか?」と

えっ??

えっ!………えっ??………………どういう事??

料理を作ることが、不安で固まってたんじゃないのか????

理解出来ない桜の思考を巡ることを諦め。

「だったらどうして、ウチの前に来たとき不安そうな顔をした??」

と質問した。

「不安そうだったかは…………分からないですけど。
お家のところで思い出してたのは…………
玲奈ちゃんと夏苗ちゃんの言葉です。
彼女達も、初めは何も出来なかったけど……
大切な人の為にお料理を覚えていくと
家にいた時には聞くことのなかった生活音を耳にするようになって………。
やがてそれが、自分の音になって。
二人の音がキッチンからすると…………
旦那さん達が起きて来るようになったって聞いて。
私もここで頑張ったら…………
いつか当たり前の生活音になって、先生が起きてきてくれるのかな?って
想像してたんです。」
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